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前立腺肥大症

監修(執筆・文責など): さくまクリニック院長 医学博士 咲間 隆裕

前立腺肥大症とは

前立腺は尿を一時的にためておく臓器である膀胱のすぐ下にあるクルミぐらいの大きさ(成人で約20ml)の臓器で、精嚢(せいのう)と一緒に精液をつくる役目を果たしています。そして、この前立腺の真ん中を通っているのが尿道です。また前立腺は膀胱の出口の開け閉めにかかわり、排尿のコントロールにも関係しています。
この前立腺が何らかの原因で大きくなると前立腺の筋肉が過剰に収縮して内側の尿道が圧迫されるために、尿が出にくくなるなどの症状(排尿障害)があらわれるようになります。これが前立腺肥大症という病気です。
前立腺肥大症による排尿障害を長い間放っておくと、尿をした後に膀胱に残る尿量が増え、尿路感染症や腎不全などの病気を引き起こすことがあります。尿が出にくくなるなどの症状があらわれたら自己判断せずに、医師に相談しましょう。

前立腺肥大症の原因

前立腺肥大症の原因はまだ完全には解明されていませんが、主な原因として加齢が挙げられます。70歳以上の男性の約70%以上が前立腺肥大症になっていることからも分かります。加齢以外の原因は、遺伝的要因、食生活、高血圧、高血糖、肥満、脂質異常などとの関係も指摘されています。

前立腺肥大症の症状

  • 尿をした後にまだ尿が残っている感じがある(残尿感)
  • 尿をしてから2時間以内にもう一度しなくてはならない(昼間頻尿)
  • 尿をしている間に何度も尿が途切れる(尿線途絶)
  • 尿を我慢するのが難しい(尿意切迫感)
  • 尿の勢いが弱い(尿勢低下)
  • 尿をし始めるのにおなかに力を入れる(腹圧排尿)
  • 夜寝てから朝起きるまでに何度もトイレにいく(夜間頻尿)

こうした症状が現れても、歳のせいだから仕方ないなどと我慢してしまう方も珍しくありません。しかし、放っておけば前立腺の肥大がより進むだけでなく、膀胱に残る尿の量が増え、感染や腎不全などの病気を引き起こすことがあります。排尿に関するトラブルを自覚したら、早めに泌尿器科を受診することが大切です。

症状が気になったら簡単な質問票でチェック

IPSS(国際前立腺症状スコア)

自覚症状の程度を点数で表す採点表です。10点以上は泌尿器科の受診をお勧めします。あなたの前立腺はどの程度か試してみてください。

IPSS(国際前立腺症状スコア)の自己診断ツールはこちら

前立腺肥大症の診断

患者さんの症状や状態に応じて以下の検査を中心に行います。

自覚症状検査:IPSSなど

前立腺超音波検査

前立腺の大きさ、形、内容の観察をします。また残尿(膀胱に残っている尿)量を計測することも出来ます。その他の病気(がんや結石)の有無を診断します。

血液検査(前立腺腫瘍マーカー PSAなど)/尿検査

血液検査を行い、腎機能障害や前立腺がんがないかを確認します。尿検査は健康診断などでも行われる一般的な検査ですが、ここでは主に排尿障害の原因となっている病気の有無や特定などのために行います。

尿流量測定(ウロフローメトリー)

クリニックのトイレに設置されている測定装置に向かって排尿することにより、尿の勢いや排尿時間を数値化して調べることで、排尿障害の程度が確認できます。

残尿測定検査

排尿した後の膀胱に残された尿の量を測定します。尿道にカテーテル(管)を挿入して正確な量を測定する方法がありますが、当院では特別な事情がない限り、超音波診断装置(エコー)を通して測定する方法をとっています。

前立腺肥大症の治療

前立腺肥大症の治療は前立腺の大きさや症状の程度などにより変わりますが、基本的にお薬での治療が中心となります。主に以下のお薬の中から症状に合わせて適切なものが選ばれ、時には複数の種類が組み合わされて処方されます。

アドレナリン受容体遮断薬(α1遮断薬)

膀胱の出口付近や前立腺にある平滑筋を直接的に緩めることにより、排尿症状が改善します。服用開始後、比較的早期に症状改善効果と満足度が得られます。

ホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5阻害薬)

本邦で最も新しい前立腺肥大症の排尿障害改善薬です。もともとはED治療薬として開発、販売されていた薬で、α1遮断薬とは全く違う作用機序を持っています。尿道や前立腺の平滑筋細胞においてホスホジエステラーゼ5(PDE5)を阻害することにより、局所のcGMPの分解を阻害し平滑筋を弛緩させ、これにより血流及び酸素供給が増加し、前立腺肥大症に伴う排尿障害の症状を緩和させます。

5α還元酵素阻害薬

前立腺肥大症の発症と進行に関わっている「ジヒドロテストステロン」を減少させ、前立腺を小さくする薬です。ゆっくりとしか効果は現れてきませんが、前立腺体積が30ml以上の前立腺肥大症には特に有効性があります。注意点としては、前立腺がんの腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)が見かけ上は半分になってしまうことが挙げられます。そのため、5α還元酵素阻害薬の内服中はPSA値を2倍にして評価する必要があります。

その他の薬

強い有効性を示す論文は少ないものの、前立腺肥大症に対して処方された時に保険適用となる薬剤がいくつかあります。例えば以下のようなものが挙げられます。

漢方薬

八味地黄丸(はちみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)など

生薬

エビプロスタット(植物エキス製剤)、セルニルトン(植物花粉エキス)など

また、前立腺肥大症のより過活動膀胱を併発している場合は上記の内服薬に加えて、β3刺激薬や抗コリン薬といった過活動膀胱のお薬を併せて使用することもあります。

前立腺肥大症の日常の問題点

日頃から以下を心がけることが重要です

  • 尿を我慢しすぎないようにしましょう。
  • 座りっぱなしなど、長時間同じ姿勢でいることは避けましょう。
  • アルコールを飲み過ぎないようにしましょう。
  • 適度な水分摂取を心がけ、過剰な摂取に注意しましょう。
  • 便秘にならないようにしましょう。
  • 適度な運動を習慣づけましょう。
  • 他の処方薬や市販薬との飲み合わせに注意しましょう。
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