間質性膀胱炎
監修(執筆・文責など): さくまクリニック院長 医学博士 咲間 隆裕
間質性膀胱炎とは
2019年に発行された診療ガイドライン1)では、「膀胱に関連する慢性の骨盤部の疼痛、圧迫感または不快感があり、尿意亢進や頻尿などの下部尿路症状を伴い、混同しうる疾患がない状態」と定義されています。女性に多く、尿が貯まると膀胱部に痛みを生じ、排尿後に痛みは軽減ないし消失することが多いため尿意亢進や頻尿の原因となります。
1) 日本間質性膀胱炎研究会,他(編): 間質性膀胱炎・膀胱痛症状群診療ガイドライン.
リッチヒルメディカル, 東京, 2019
間質性膀胱炎の原因
病因や病態ははっきりわかっていません。膀胱の粘膜を覆う細胞が何らかの形で損傷し、その結果、尿中の物質が膀胱を刺激しているのではないかと考えられています。
間質性膀胱炎の症状
「膀胱炎のような症状が全然よくならず、尿検査は異常ないから精神的なものと言われた」や「過活動膀胱の診断で過活動膀胱治療薬を服用したがよくならない」などの経緯がある場合、間質性膀胱炎を疑って検査を進めていきます。
間質性膀胱炎の検査
少し専門的になりますが、間質性膀胱炎はハンナ病変という膀胱粘膜の異常を認めるハンナ型間質性膀胱炎とハンナ病変は認めない膀胱痛症候群に分かれます。そのため間質性膀胱炎を疑ったら膀胱鏡検査が必須となります。
間質性膀胱炎の治療
1.食事療法
特定の飲食品を摂取すると症状が悪化することが知られています。トマト,レモンなどの柑橘系果物、唐辛子やわさびなどの香辛料、カフェイン、アルコールなどが症状を悪化させる飲食物とされているため、これらの摂取を避けるようにするのが食事療法です。
2.薬物療法
原因がはっきりとわかっていないため特効薬はありませんが、抗ヒスタミン薬、鎮痛薬、漢方薬などの飲み薬で症状がよくなることもあります。
3.手術療法
ハンナ型間質性膀胱炎に対し保存的治療を行っても効果が乏しい場合は、内視鏡下にハンナ病変切除や膀胱水圧拡張を行います。ハンナ病変は認めない膀胱痛症候群に対しても膀胱水圧拡張を行うことがあります。
4.ジメチルスルホキシド(DMSO)膀胱内注入療法
DMSO(ジメチルスルホキシド;ジムソ®)膀胱内注入は、2021年4月に本邦で保険適応となりました。作用機序が十分解明されていませんが、ジメチルスルホキシド溶液を膀胱内に注入することで抗炎症作用と鎮痛作用により症状の緩和が期待できます。さらに副作用は少なく、クリニックでの治療が可能です。