梅毒
監修(執筆・文責など): さくまクリニック院長 医学博士 咲間 隆裕
梅毒とは
梅毒は梅毒トレポネーマによる性感染症で、一般に、皮膚や粘膜の小さな傷から梅毒トレポネーマが侵入し感染します。やがて血行性もしくはリンパ行性に全身に散布されて、様々な症状を引き起こす全身性の慢性感染症です。感染者数は2012年から右肩上がりに上昇し、2019年からの減少傾向が2021年から再度増加し、2022年の梅毒感染者数はおよそ1万3千人にのぼり、前年の1.6倍に急増しました。今や、危険な性行為を行う特定の人達の疾患ではなく、ごく普通の性的活動で感染する疾患となっています。
梅毒の原因と感染経路
粘膜や皮膚の接触を伴う性行為(膣性交、肛門性交、オーラルセックス)などで感染します。
梅毒の症状(潜伏期間)
梅毒は感染した後、その期間によって病状が異なります。感染行為から10~90日間の潜伏期間を経て第1期梅毒となります。その後4~10週間の潜伏期間を経て第2期梅毒となり、第3期梅毒は後期神経梅毒として、感染後2~30年で2~5%で進行麻痺となり、そして感染後3~50年で2~9%で脊髄癆となります。
第1期(感染後約1か月)
感染した場所(陰茎など)にしこりや潰瘍ができます。
股のリンパ節が腫れることがあります。
治療しなくても、数週間で症状は消えます。
第2期(感染後約3か月)
手のひらや足の裏、全身に赤い発疹やぶつぶつができます。
治療しなくても、数週間から数か月で症状は消えます。
後期(感染後数年から数十年)
やわらかいゴムのような腫瘍が体中にでき(ゴム腫)、この時点でも治療を行わないと大動脈瘤、髄膜炎や神経障害(神経梅毒)などが生じます。
梅毒の診断
採血による血液検査で感染の有無を確認します。RPRとTPHAの定性検査を実施します。感染したと思われる時から4週間以上経過していれば検査可能です。
梅毒の治療
ペニシリン系抗生物質の飲み薬や筋肉注射で治療します。内服薬は通常、2~4週間の服薬が必要となります。ベンジルペニシリン持続性筋注製剤が2022年1月に保険収載され使用可能となりましたが、現在当院では採用しておりません。